過酷な状況だからこそ、深く思いやり支え合うことがある、というお話
『今日も言い訳しながら生きてます』(ハ・ワン著 岡崎暢子訳 ダイヤモンド社刊)の中の「貧しさだって幸せをもたらす」という章の一節です。
ハ・ワン氏は、ソウルオリンピックの再開発で強制撤去されるまであった「小さなボロ屋がひしめく貧民街」の家で、きつい肉体労働でなんとか家族を養う父と、その父に日々DVを受ける母の元で育ちました。
pp249-250
僕が小学生だったある日、母が家出をしたことがある。毎日ケンカして父に殴られる人生に嫌気が差したのだ。
母が消えてから4、5日した頃、酒に酔った父が子どもたちを集めて「母さんを探してこい!」と叫んだ。小さな子どもたちが、どうやって探し出せるというのか。だけど、探すふりでもしないと怒られるから、僕らは家を出た。
そして、どこに行けばいいのかわからず、近所をぐるぐるさまよっていたときにこう思った。「いっそ母さんが戻ってこなければいいのに」と。母親を最も必要とする時期の子どもだったにもかかわらず、そう思った。
母さんは新しい人生を生きてくれたらいい。こんな地獄から母さんだけでも脱出してくれればいい。
しかし、母は戻ってきた。子どもたちを見捨てることができなかった。
それ以降も、母は苦しい日々に耐えながら僕らを育てた。もし母が僕らを捨てて消えてしまっていたなら、僕らの人生も違ったものになっていただろう。
こんな僕が人間らしく生きてこられたのは母のおかげだ。母にはいつも感謝の気持ちしかない。
(読みやすくするために行間を空けました by L)
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