私のいない故郷
私のいない故郷
帰れぬことに
死ぬほどの望郷の念が募り
ある日
どんなに故郷に帰りたくても
帰れないのに気づいた
なぜなら
故郷を出たこともなければ
故郷を失ったこともない
最初からいつも故郷はここにある
私がいなくなって
ふと気づいたら
永遠の太陽に照らされた至福と静寂の家にいた
ふたたび私が出現して
その故郷は消えた
だから
帰郷の条件は
私が消えること
私
苦痛を含むありとあらゆる絢爛豪華な体験を
望むだけできるようにと構築された
この上なく見事なプログラム
私が紡ぎ出す幻影
そして
永遠の故郷
どちらが良いかと言われれば
どちらも良いと
言うしかなく
私を消そうとして
消せるものでもなく
私に執着しても
いつかは手放さなければならず
今はどうやら欲張りさながら
両方持つことを許されて
好きなだけ楽しんでよいのかもしれない
- Poem & Fable
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