死の陰の谷を歩むとも
先日、中国の奥地で、大変薬効の強い田七人参の有機栽培に成功して、製品化された白井博隆さんにお会いする機会がありました。
まず中国という難しい国で、日本人が、それも個人がゼロから何かをするというだけで目眩がするようですが、山盛りの農薬を使うのが当たり前な土地で、難しい作物を有機栽培した上に、一定量の安定した収穫を確保して製品化するなんて…。
実際、『白井博隆田七人参ものがたり "奇跡の田七人参"ができるまで』(田中泰子著 梓書院刊)には、ひどい裏切りに遭ったり、尋常でない七転び八起きの末にようやく栽培が成功すると、莫大な利益を見込んで政府が農園を接収にかかる(漢方薬局では、農薬使用の田七人参でも、途方もない高値で売られているそう)、それで万事休すのはずが、現地の村人たちが暴動を起こして阻止したとか。。。
もしかして、この人、頭のネジが十本くらい緩んでたりして?(白井さん、ごめんなさい)、あるいは途轍もない市井の偉人かも、と思ってお会いしたところが、明朗快活そのものの、良い意味でフツーな方でした。
何か尋常でないものを感じたので、直接お会いするチャンスを逃さない方が良いと思ったのですが、一番惹かれたのは、利他の精神を貫く誠実さでした。
村人たちが暴動を起こしてまで彼の事業を守ったのは、自分たちの利益を守るだけでなく、彼が長年にわたり、村ごと支えて、働く人たちやその家族までを大切にしたからに違いありません。
本を読んだだけでも、その苦労が偲ばれましたが、実際にその口から「ずっと倒産した会社を抱えてましたからね…」という言葉を聞き、その間どうなさっていたのかとお尋ねしたら、ご実家がりんご農家なので、畑で自給自足して凌いだり、周囲から援助を受けたりしてました、とのこと。。。その話になると、それまでの明るかった目がにわかに曇りました。
その間の、恐らくは大変な暗闇の中で過ごしたであろう記憶は、あまり無いそうです。
幼い頃に性的虐待を受けた人たちによく起こる、無意識に記憶が脱落してしまう現象がありますが、それに類する過酷な体験だった可能性があります。
奇跡のリンゴの木村さんが自殺寸前まで経験した事に触れると、「みんなそこまで行くんですよ〜、でもね、死ぬ勇気がなかっただけなんです」と笑われましたが、もうそれ以上聞いてはいけないと思いました。でも、充分でした。白井さんは、市井の隠れた偉人のお一人でした。
そして、最後に、ぽつりと、
「8年は……長かったですよ…」
とおっしゃいました。
白井さんが頑張れたから、私たちも同じように頑張れる、とは思いません。。。
でも、これから私の中では、白井さんの話が、もう一歩も進めませんっ(;;)みたいなどん底でも、なんとか踏ん張る一つの柱になってくれるような気がしています。
- スピリチュアル
- / trackback:0
- / comment:0
- [ edit ]