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オカメなハート



愛する人の「新たなあらわれ」 by ティク・ナット・ハン

ティク・ナット・ハン『怖れ』(島田啓介訳 サンガ刊)より、心に沁みる一節です。

pp68-70

 私は母親を亡くしたとき、大変つらい思いをしました。その日の日記に私は、「人生で最大の不幸が起こった」と書いています。そうして母の死を一年以上も嘆いていました。

 ある晩、ベトナムの高地にある寺の裏手の斜面の中ほどにある、お茶の木に囲まれた自分の庵で寝ていたときのことです。母親の夢を見ました。夢の中で彼女と私は座りながら、とても楽しく話をしていました。母はまだ若くて美しく、髪の毛は肩を包んで流れ落ちていました。亡くなったという事実などなかったかのように、私たちはともに座り、とても楽しく話していました。

 目覚めたとき私は、けっして母を失ってはいないのだという、まぎれもなくたしかな感覚をもっていました。それは、母がそばにいるというはっきりとした感じです。私は理解したのです。母を亡くしたという思いは、たんなる「概念」なのだと。私の中で母親が生きていること、これから先も生き続けることは明らかでした。

 私は扉を開け外に出ました。丘の斜面はくまなく月光に照らされています。やわらかな光の中、並んだお茶の木のあいだをゆっくりと歩きながら、私は母がまぎれもなく一緒にいることを悟りました。月光は、いつも愛情をもってやさしく私を撫でてくれた母その人でした。

 足が大地に触れるたびに、私は母の存在をそこに感じました。私の体は自分だけのものでなく、母と父の、祖父と祖母の、さらにすべての先祖の生きた継続だということが腑に落ちました。「私の」ものと思っていたこの足は、本当は「私たちの」足なのです。母と私は、ともに湿った土の上に足跡を残していったのです。

 そのとき以来、母親を失ったという考えはすっかり私の頭から去りました。私のすべきことは、両手のひらを見つめ、顔にあたるそよ風や足の裏の地面を感じ、私とともにいて、いつでも会える母の存在を思い起こすことでした。

 愛する人を失うことは辛いものです。しかし深く見つめる方法を知ったとき、逝った人の本質には生も死もないのだと悟る鍵が手に入ります。物事には「あらわれることが終わるとき」があります。

 愛する相手の「新たなあらわれ」に気づけるよう、いつも注意していてください。実践に努めれば気づくことができます。木の葉や花々、鳥や雨など、周囲の世界に感覚を開きましょう。立ち止まって深く見つめれば、愛する人が何度も何度も様々なかたちであらわれてくるのがわかるでしょう。あなたは怖れと苦しみを手放し、人生の喜びを再び抱きしめられるのです。

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プロフィール

 L

Author: L
メインのキャラクターは、瞑想・哲学・隠遁系と言われているシリウスB。

現実界では、東京大学大学院(人文科学研究科)修了後、都内の大学にて十年間教壇に立った後退職。
縁あって、タイのチェンマイでエネルギーリーディングとセルフヒーリング / エネルギーワークを学び、スピリチュアルカウンセリングを始めて今に至っています。

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