スケジュール帳を失くす前に by トーシャ・シルバー
『私を変えてください』(釘宮律子訳 ナチュラルスピリット刊)より、「64 粉々になったガラス」の本文を引用します。
pp204-205
十年くらい前、サンフランシスコのジャパンタウンで駐車したときのこと。あの頃の私はまだ、仕事のスケジュールを抑えるのが苦手だった(太陽か月、またはアセンダントが山羊座で、それが苦手でない人がいたら教えてください)。うっかりしているとセッションの予約を入れすぎて働きづめになり、後になってひどく大変な思いをしていた。
私は軽く蕎麦を食べようと店に入った。三十分後に戻ってくると、道路脇にガラス片が散らばっていた。誰かが私の車の窓を叩き割ったのだ。
ところが、持っていかれたのはひとつだけ。私の予約帳だ。
CDや小銭、それに後部座席の革ジャケットさえも、手をつけられていなかった。その瞬間、にわか雨が降りだした。
少し茫然としてその場で座りこんでいると、気品漂う年配の男性が微笑みながら近づいてきて、大丈夫ですかと訊いてきた。はい、と答えると、彼はゆっくりと財布をあけ、二十ドル札を一枚、座席に投げ入れた。「万が一、必要だったら」と、ふり返りながら言い、ゆったりと去っていった。
割られた窓から雨が注ぎこむなか、私はニナ・ハーゲンを大音量で流し、びしょ濡れになりながら陽気にベイブリッジを渡った。
全員とスケジュールを再設定するという大変な目には遭ったが、予約を全部入れなおすと…休息や遊びを入れる余裕がだいぶできていた。
いい勉強になった。
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