柴山和久氏の一杯のかけ蕎麦、じゃなくて、コーヒー
これは飛びっきり豊かな話です!
おまけに、柴山氏はバシャールなんかご存知ないでしょうに、「自分のしたい事がしたい時にできる事」というバシャールの豊かさの定義と、かなり近いところに着地しているのが、なんともまあ。。。
長いですが、是非どうぞ☆
Yahoo!ニュースより転載します。
( 12/8(土) 8:00配信 MONEY PLUS )
あなたにとってお金とはどんな存在でしょうか。家計簿アプリを使っている方なら、普段からお金をどんなふうに使い、またこれからどんなふうに使っていきたいか、考えることが多いのではないでしょうか。
私は大学を卒業してから約20年間、一貫してお金に関わる仕事をしてきました。新卒で入った財務省では金融や財政政策に関わり、その後コンサルティングファームのマッキンゼーでは日米の金融機関をサポートしました。今は全自動の資産運用サービス「ウェルスナビ」で起業し、CEO(最高経営責任者)を務めています。
仕事では時に数兆円単位のお金を扱いましたが、プライベートではお金があったりなかったり、ジェットコースターのように変わる環境に身を置きました。
仕事がなかった時期は、貯金が 8 万円まで落ち込み、野菜の値段が数十円上がるだけで体が反応するような生活を送りました。一方で、マッキンゼーのニューヨーク時代にはファーストクラスでの出張が当たり前という華やかな暮らしを経験しました。
数十円の差に悩む生活と、10ドル(約1000円)以下のお金は考えずに使う生活の両方を経験したことで、私はお金の存在意義と真剣に向き合うようになりました。
失業中に遭遇した“フラペチーノ事件”
当然といえば当然ですが、お金がない時期はお金のことばかり考えてしまいます。いわば、お金にがんじがらめになっている状態です。
財務省を退職した後、フランス郊外にあるビジネススクール・INSEADに留学しました。留学には多額の費用がかかります。退職時に1000 万円あった蓄えは、卒業するときには100万円を切っていました。
ビジネススクールを卒業すれば仕事が見つかるだろう、という私の考えは安直でした。20 社近い企業に応募しましたが、仕事が決まらないまま卒業することになりました。
卒業して 2 カ月経った 2010年9月、私は妻と、四谷三丁目のスターバックスで 1 杯のドリップコーヒーを分け合い、将来について不安を募らせながら外を眺めていました。
腰かけていたカウンター越しのテラスに、愛犬をベビーカーに乗せた老婦人が現れました。老婦人は店内でマンゴー味のフラペチーノを注文するとベビーカーのところへ戻り、愛犬にフラペチーノを食べさせ始めました。
貯金8万円のどん底が起業の原動力に
この瞬間、私は言い表しようのない衝撃を受けました。
品のいい飼い主に大事にされているこの犬は、フラペチーノをおいしそうに食べている。片や一大決心をして財務省を辞め留学した私は、無職でお金もなく、昼間から 1 杯のコーヒーを妻とシェアしている。自分は世の中に必要とされていない人間なのではないか──。
このとき、経済的にも切羽詰まっていました。生活費が残り2~3ヵ月分しかないという現実を突きつけられると、近所のスーパーの野菜の値段に敏感になります。一袋200円だったジャガイモが230円になると、体がビクッと反応しました。
やや遅れて頭が「ジャガイモが値上がりしたけれど、今日はカレーを食べられるかな」と考えます。野菜を買うのをためらうほどなので、果物はもちろん贅沢品でした。
このどん底での経験が、私のその後の人生を鼓舞してくれています。どん底から4年後、マッキンゼーを退職して起業しようと思い立った時、「失敗するかもしれない」という不安が頭をよぎりました。
統計上、 7 割の会社が創業から 3 年以内に倒産します。真っ先に思い浮かんだのが、あの“フラペチーノ事件”でした。うまくいかなくても大丈夫だ、あの時ほどひどい境遇にはならないだろう、と腹をくくりました。どん底を見た経験が、私を精神的に強くしてくれたように思います。
この翌月、私はマッキンゼーから内定をもらいました。夫婦の貯金は 8 万円にまで減っており、まさに間一髪のタイミングでした。
マッキンゼーで経験した別世界
マッキンゼーで働き始めた私を待っていたのは、別世界でした。“フラペチーノ事件”など幻だったかと思えるほどの高収入とVIP待遇は、私を有頂天にさせました。
特に入社から 1 年半でニューヨーク・オフィスに移ると、クレジットカードはプラチナカードになり、飛行機は毎回ファーストクラスにアップグレードされ、出張先のホテルではスイートルームを用意されるようになりました。
ある時ニューヨークで国際線の飛行機を降りると、自分の名前のカードを掲げたグランド・スタッフが待機していました。グランド・スタッフは、行列に目もくれず入国審査官のいる場所へまっすぐに私を誘導します。
「お客様をお通しください」と彼女が言うなりスタンプが押され、あっさり入国できてしまいました。空港の出口には、航空会社が手配した黒塗りのハイヤーが待機していて、そのままマンハッタンに向かいました。
ホテルでも同じような待遇を受けました。あるグローバルなホテルチェーンでは、 1 年間の宿泊が100日を超えると、専任のコンシェルジュが付きます。
コンシェルジュに連絡すれば、「満室」であっても世界中のホテルを簡単に予約してくれます。ライバルチェーンのホテルを予約してほしいという願いも、即座に聞き入れられました。スイートルームが空いていればアップグレードされ、部屋には支配人からの手紙とともにフルーツが用意されていました。
最初のうちは好奇心も手伝い、VIP待遇を心から楽しんでいましたが、そのうち、心のどこかが落ち着かなくなっていきました。ひどく不釣り合いな待遇を受けているのではないかという不安です。
「ファーストクラス=幸せ」ではない
冷静に考えれば、私がお金を払ってファーストクラスに搭乗し、スイートルームに泊まっているわけではありません。仕事柄、出張が多く、航空会社やホテルからお得意様だと思われているだけで、それもマッキンゼーのメンバーとしての特別扱いです。会社を離れれば消えてしまう、かりそめの姿にすぎません。
やがて出張では、スイートルームへのアップグレードを断るようになりました。普段から広い家に住んでいる人にとっては心地よいのだと思いますが、東京の狭いアパートに慣れていた私は、ホテルの部屋も狭いくらいのほうが落ち着きました。プラチナカードも解約しました。
どん底の生活からマッキンゼーに拾ってもらい、きらびやかな世界に心を奪われた瞬間があったのは事実です。航空会社やホテルの最上級会員になってみたい、プラチナカードを手に入れてみたいという気持ちも確かにありました。しかし、欲しかったものを手に入れても幸せを実感できず、それどころか不安に襲われました。
高収入もVIP待遇も幸せをもたらさないことに気づいた私は、「本当の豊かさとは何か」「自分にとって大切なものは何か」をようやく考え始めました。周りが決めた豊かさや幸せの基準に従うのではなく、自分自身にとって本当に大切なものとは何か、本当にかなえたい願いとは何か、自分の心の内なる声に耳を傾け始めたのです。
そして私は、「お金は自由を得る手段だ」という結論に至りました。お金が十分にあれば、夢や目標を実現できるチャンスが広がります。お金のためだけに働く必要もなくなります。
一方で、お金に執着すると自由を失うこともあります。もし私がVIP待遇を受け続けたいがために、お金に執着して仕事を続けていたとしたら、ウェルスナビを起業することはなかったでしょう。お金を得ることが自己目的化すると、かえって不自由になってしまうのです。
お金は人生と切っても切り離せない存在です。お金と向き合い、お金とのちょうどいい距離感をつかむことは、私たち一人ひとりの人生をより豊かにしてくれると思います。
※ 本稿は柴山和久『元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いたこれからの投資の思考法』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。
- スピリチュアル・アーカイブ
- / trackback:0
- / comment:0
- [ edit ]